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鉄旅 [旅景]




 時の移ろいは早いもので、
 うっかりしていると感動した事柄も日常の雑事に埋もれてしまいます。

 昨年の三月に初めて手にした青春18きっぷの旅、
 多くの旅情と感情を与えてくれたこの旅、
 最初の記事(http://wabi-sabi.blog.so-net.ne.jp/2010-03-18)をご覧いただいたのは昨年の四月、
 あれからすでに十一ヵ月を過ぎました。
 すぐさまその旅を記事として綴りたかったのですが、
 家庭の事情で記事を作り上げる暇がなく滞っていました。
 その旅をした季節があまりにも掛け離れていてはいけないと思い立ち、
 下書きとして寝かせておいた記事に手を付けました。
 
 この度の震災後ブログの休止を決めて一週間、
 震災にあわれた方々の日々生活のことを思うと少々気が引ける心情に変わりませんが、
 この機会を逃してはこの記事をご覧いただく機会がなくなるので、
 この一年遅れの旅の記事をきっかけにブログを再開したいと思います。





 「鉄道の旅」  

 青春18きっぷ 一日目 〈その二〉



 高崎線快速の快適なグリーン席でビールを飲みながらの旅は、
 思っていたよりもその時間は短く感じられました。
 もうしばらくこのまま乗っていたいと思わせるほどで、
 それほど缶ビール片手に車窓を眺める旅が快適でした。

 高崎駅では時間に余裕がありました。
 この後に乗る上越線の列車の発車までは約五十分、
 少しは余裕を持って昼食を取ろうということで、
 気になるホームにある駅そばの店を横目で見ながら通り過ぎ、
 一度改札を出て駅ビルの階上にある飲食店街を覗きましたが気を引かれる店は無く、
 駅前に出てみたけれど食事のできる店がほとんど見当たらず、
 かと言って駅から離れる気にもなれず、
 再び高崎線のホームに戻り立ち食いそば店の暖簾を開けました。
 駅そばの店ではかけそばを食べることが多いのですが、
 この店には立ち食い蕎麦店でありながら珍しくラーメンがあり、
 先客の駅員もラーメンを啜っていたのでこの店はラーメンが美味いのではと思い、
 ここではラーメンを注文しました。
 出てきたラーメンは私好みのあっさりとした味、
 悪く言えば何も凝っていないラーメンですが、
 年を重ねる毎にこってりとしたラーメンが苦手になる私には、
 こうした素朴なラーメンが有難くなっていたので、
 昼酒の後の口にことのほか美味く感じました。
 
 ラーメンを食べた後、次の列車に乗るまで少し時間があったので、
 橋上の売店で水沢うどんを土産に買い込み、
 次の列車に乗り込みました。



上越線01.jpg
〔01〕

 手前の電車は両毛線で栃木県の小山まで行く電車。
 奥に見える電車が水上まで行くと電車、
 実際にはこの後別のホームからのこの電車に乗ることになります。



 この先は上越線に乗り換えます。
 上越線では新潟県の六日町を目指します。
 残念ながらこの先の上越線は、
 上越新幹線が開通してからは運行本数が少なく、
 かつ、目的駅の六日町までの直通列車がありません。
 したがってまずは水上駅まで行きます。

 高崎から先は嘗て東京へ行く際に辿った信越本線という選択肢もあり、
 碓氷峠超えの旅情を味わう事にも心惹かれましたが、
 現在この信越線は鉄路が途絶えています。
 長野新幹線が開通した後、
 急坂で鉄道の難所として、
 また峠の釜飯で有名な横川駅から軽井沢駅間は、
 鉄路が絶たれバスの運行に人の輸送が切り替わっています。
 軽井沢の先篠ノ井までは三セクのしなの鉄道に経営も変わっています。
 そうした乗り換えも旅の楽しみではありますが、
 今回は上越線に乗り新潟と群馬の県境を越える鉄路を選びました。
 私はこれまでにこの路線での県境越えをしたたことがありませんでした。
 古くは新潟を代表する特急と言えば「とき」がありました。
 新潟と東京を結ぶこの特急に一度は乗ってみたかったのですが、
 その思いを達成する前に上越新幹線が開通し「とき」は廃止となりました。
 また上越線の県境には長大なトンネルがあり、
 上りと下りと別々のトンネルとなっていて、
 上り線のトンネルはループトンネルとなっている特殊な路線区間となっています。
 また、そこには乗降するホームがトンネル内にあり、
 地上駅までは長い階段を登らなければならない地下駅が二駅も続いて存在しているなど、
 鉄道好きではない者にとっても興味を惹く要素が多く存在しています。
 新潟県に住みながらそこを通った事がないというのは勿体ない、
 一度この上越線の県境越えをこの目で見たいと思っていたました。
 ちょうど時は三月、
 きっと窓の外は雪が地を覆っており、
 上州の青空の下光の届かない長いトンネルに潜れば、
 わずかその数分後には一転白銀の世界に飛び出し、
 かの有名な小説の世界をこの身で体験することが出来る、
 そんな情景を頭の中で描いての選択でした。



 さて、話を旅に戻します。
 次ぎに乗るべき上越線のホームには既に列車が待っており、
 思った以上に乗客も多く、
 空き席がほとんど無く一つだけ空いたクロスシートを最後尾の車両に見つけました。
 18きっぷの旅では快適なシートを確保しようと思うと、
 機敏な行動が必要だとこの時知らされました。
 各駅停車ののんびりとした旅ですが、
 乗り換えは反して素早い行動を強いられます。



 余談ですが、
 新潟県には二つの「上越」が存在します。、
 新潟県は日本海に面し北は山形県、南に富山県と接しますが、
 新潟県は北の山形側から「下越(かえつ)」「中越(ちゅうえつ)」「上越(上越)」、
 そして「佐渡」の四つの地域に分かれています。
 鉄路の「上越線」は、この地域分けによるものではなく、
 上州=群馬県と越後=新潟県を結ぶ路線の意であり、
 新潟県にある上越線沿線あるスキー場などにつけられた「上越」はこの鉄道路線名に由来します。
 一方私の住む「上越市」は、
 前出の地域分けの上、中、下越によるもので京都を都とした時代に源とするものです。
 つまり、都に近い地域が「上越」となり、
 都に一番遠地域が「下越」となります。
 わかりやすく言うなれば、
 京都に近い石川県が「越前」、次ぎに富山の「越中」、
 京に一番遠い新潟県が「越後」とあるのを思い起こしていただくと理解しやすくなると思います。



 電車の旅では乗り合わせる乗客により、
 心地よい旅になったり、
 時には迷惑な客によって不快な思いをすることもあります。
 けれども旅そのものを楽しむという目的で電車に乗っている場合には、
 少しだけ心に余裕がありますから、
 迷惑な客にも少しだけ心広く対応することが出来ます。

 ボックスシートに一人で掛けているときは気楽で、
 車窓を楽しむ余裕があり、
 本を読んだり思い浮かぶ事などノートに書くことが出来ますが、
 ボックス席が他の乗客で埋まると、
 心の余裕が無くなり窮屈な思いをすることもあります。
 それでもこうして知らない路線の列車に乗るということは、
 その地域の様子を伺い知ることが出来るので楽しいものです。
 話し言葉や話の内容など、
 服装や顔の特徴などを車窓と重ね合わせてそっと聞いていると、
 車の旅では味わうことのできない旅情がそこにあります。

 高崎を出発して幾駅で停まる度、
 隣の席と向の席が埋まりましたが、
 隣のボックス席はおばさんの三人組、
 どうやら水上温泉に行くように見受けられますが、
 ありがちな大きな声での日常生活の話題、
 否応なしにその会話が耳に入ってきますが、
 こちらは旅情とは違い少々うるさく感じました。
 また、彼女らはみかんを食べ始めました。
 これも鉄道旅というか、女性によくある光景、
 いや、これは光景というより私の鼻を刺激した感覚でした。

 斜め向かいには女子大生と思われる二人組みが、
 発車前から代わる代わる写真を撮っていましたが、
 電車が発車すると駅弁を食べ始め、
 春休みの旅を楽しんでいるようでした。
 途中で乗り込んできた地元の中年男性二人組みと同席になると、
 その内の一人の男性から車窓のガイドを受けていました。
 彼女らも私と同じ18きっぷの旅で、
 今日は金沢まで行くこと聞き取ることが出来ました。




上越線02.jpg
〔02〕

 水上駅にて六日町まで乗る電車。
 水上の澄んだ空気に空は青く、
 電車車体に帯びた濃淡の青い線が、
 晴れ渡った空によく似合います。






上越線03.jpg
〔03〕

 向こう側の電車が高崎から乗ってきた車両。






上越線04.jpg
〔04〕

 こうした鉄旅での撮影に慣れておらず、
 何を撮るか明確に決まっていないので、
 自分が乗った車両をきっちり撮るということもなく、
 写真撮影に関しては反省点多し。


 高崎からは写真を撮ることを忘れ旅を楽しみました。
 私は旅に限らず出掛ける時にはA6サイズの小さなノートを携えています。
 出かけた先で思ったこと、感じたことなどを記録するのが目的ですが、
 時にはそのノートに四色ボールペンでメモ代わりの拙い絵も描きます。
 記憶を留めるために一枚の写真も有効ですが、
 やはり自分の言葉で書きとめた方が後々記憶を辿るには文字の方がわかりやすく、
 こうしてブログの記事にもしやすいと感じています。
 最初の18きっぷの旅では、
 残念ながら気の利いた写真を撮ることは出来ませんでした。
 この日撮った写真は数少なく、
 そのほとんどは乗り合わせた電車の写真でした。

 水上を後にした列車は、
 この旅大きな期待を抱いていた県境のトンネルと抜け、
 新潟県に入り六日町まで行きます。
 時間に制約がなければそのまま長岡まで行き、
 上越線を制覇したかったのですが、
 この日は六日町からは18きっぷでは乗車することのできない
 ほくほく線に乗り直江津に行きました。
 
 唐突ですが、
 最初の旅はここで記事を終わりにします。
 次回記事はこの日の続きになるか、
 もしかすると二つ目の旅になるかまだ決めていませんが、
 このシリーズの続きにするつもりでいますので、
 しばらくはこの鉄旅にお付き合いのほどよろしくお願いします。



    *



 新潟県は大震災に被災した宮城県、岩手県と同じく東北電力の電力を受給しています。
 自分にできることを少しでもと思い現在自宅の節電に努めています。
 不要な家電のコンセントを抜き電球も器具から外す。
 トイレの暖房便座と人感センサーで稼働する換気扇の電源を切る。
 テレビは極力見ずにラジオを聴く。
 一枚多く着込んで暖房を極力使わないか温度設定を下げる。
 微力ながらパソコンの使用も控え無線ルーターの電源も不要な時は切る。
 などなど、もっと手はあるのだと思いますが、
 まずは思いつくことを実行しています。
 また、不要な車の使用は避け、
 少々の寒さではエアコンを使わない。
 アクセルの急な踏み込みを止め、
 経済速度での走行を心掛けています。
 会社でも不要な電燈を消し、
 来客にもその意を伝え少々暗い中で接客し、
 パソコンやモニタを細目にスリーブにするようにしています。
 東北電力は今のところ計画停電を実施していませんが、
 昨年夏の異常気象を思うとこの夏の電力に危機を感じます。
 運が良ければ計画停電しないのかもしれませんが、
 電機に一存する冷房を昨年夏の猛暑に重ね合わせ考えると、
 今から節電に慣れておく必要があり、
 何かしらの準備をしようと考えています。
 とにかく今年の夏を省電力で乗り切る、
 そうした覚悟もしておかなければならないでしょう。

 








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