妻有 [心景]
越後妻有 大地の芸術祭 その九
〔01〕
妻有の農家の一軒家、
今は主を失い朽ち行く家に、
天井からぶら下がっているのは数多くの白い糸。
〔02〕
多くの窓が閉め切られ暗い空間、
僅かに解放された小窓から差す明かりに、
その糸立ちは白く浮かび上がります。
〔03〕
その糸には米粒が連なり、
米粒は一条の光に透き通ります。
〔04〕
吊された糸には三次元空間を、
連なる米粒の長さには、
時間軸を感じます。
*
暗い空き家に吊されるのは、
米粒の付いた糸、
その米粒が一つの窓から差し込む光に浮き立っています。
空間に蔓延る糸、
その間隙を縫って観る者は回遊します。
写真では敢えて画面の中に入れなかったのですが、
この糸の合間に嘗てこの家で使われてきた道具、
鍋や茶碗などが所々に吊されています。
この作品はとても印象的でした。
空間と光を上手く使い、
米粒の付いた糸と上手く融合していると思いました。
*
この空間での撮影、
対象が小さく焦点が上手く合いません。
また、写真を撮るには光が足らず、
被写体がぶれてしまいます。
思い通りに撮影することは出来ませんでしたが、
黒一色の中に浮かび上がる白い米粒と糸、
色合いは思い通りに撮ることが出来ました。
*
米所新潟に於いて、
米粒をこうした作品の為に使うことに、
一種の嫌悪感を抱きました。
実際に、この展示会場となった集落でも、
米を粗末に扱うことに拒否をしていたそうですが、
出来上がった作品を見て、
受け入れる人が居たという事実に、
アートがこうした山奥の人の心を何かしら動かす力があったのかと思いました。
それが良いことかどうかは分かりません。
また、私も最初はそのような想いが頭の中を過ぎりましたが、
この空間に接すると受け入れる心が広がりました。