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言訳 [雑景]






 久方ぶりのブログ更新です。
 前記事では不甲斐ない写真の言い訳をするという約束でした。
 その言い訳を記事にするにあたり、
 まずはその写真を撮った経緯を説明しようかと思い、
 書き始めた文章が、
 その思い入れが思い掛けず深かった為、
 ブログ記事としてはかなりの長文となっていまいました。
 この記事は時間に余裕のある方のみお読み下さい。






 その日、
 午後から雪が降りました。
 時折柔らかな薄日が差す午前の天気が、
 予報通り午後から崩れました。
 少し空気が冷え込んだかと感じ得ると、
 いつの間にか空から雪が舞い降りていました。
 降り始めは霙でした。
 少し空気が冷え込んできたかと思うと、
 次第にそれは大きなぼた雪となりました。
 その雪片が大きいため、
 舞い降りる速度がゆったりとしています。
 その様はまるでスローモーションの映像を見ているようで、
 目の着いた一片が地上に落ちるまでを追い続ける事ができます。
 そんな雪景色を仕事の狭間に、
 心の片隅で眺め密かに楽しんでいました。


 
 その日、
 出向先の仕事において一つの節目を向かえました。
 私が担当していた部署の検査日
 特別難しい検査ではありませんが、
 やはり緊張を強いられる一日です。
 そうした日に気象状況を眺め楽しむ余裕が生まれたのは、
 やはりこの検査を乗り切れば精神的に随分楽になるという、
 心理が心の深いところで働いていたように思われます。

 結果、
 無事に検査を終え安堵しました。
 大きな山を無事に一つ越えました。
 ぼた雪はまだ頻りに降り続いています。
 気温がもう少し下がればやがて雪に変わりそうな気配が漂っていました。


 
 その夜、
 出向の身でありながら、
 検査に立ち会っていただいた関係者を接待するため、
 上位会社の要請により出向の身分でありながら、
 その接待の席に同席することになっていました。
 勿論私は接待をする側でした。
 
 その接待の席は山間のとある温泉施設に設けられました、
 その宿は海岸線沿いの国道から一筋の川に沿って分け入る一本道を、
 行き止まるまで登った山深く静かで小さな部落の片隅にあります。
 この接待の任務を一週間ほど前から言い渡されていましたので、
 今の時期、雪に埋もれている谷やそこに流れている川など、
 何度か訪れた事のあるその周辺の記憶を解きながら、
 そこに広がる雪景色を、
 自分の想像する写真的光景に頭の中に作り上げては、
 自分の思い描く写真を撮りたいという思いを温めていました。



 その後、
 検査を終えた一行が、
 夕暮れにはまだ十分に時間のある内に温泉施設へと向かいました。 
 私は仕事の関係で一足遅れ、
 夕暮れの気配漂う頃仕事場を離れました。
 
 宿泊場所へ向かう道は海沿いの国道、
 実は道中冬の日本海を眺めるのが一つの楽しみでありました。
 私冬の海、
 中でも日本海の鉛色に沈む冬の海が一番好きです。
 雪の降る天候の悪い日だからこそ、
 この日は私が思い浮かべる荒ぶる日本海の表情を
 目にすることが出来るのではないかと期待していましたが
 海は至穏やかで波や風も無く至って静かでした。
 深く鉛色の海に白い波頭、
 その高い波の間に覗かせる深い緑色、
 それらの色の対比、
 私が勝手に描いた冬の海、
 そう容易く出会うことはできません。 
 
 左手にそうした緩やかな表情の日本海を見てしばらく走ります。
 私の住む町の港を目にする事が出来る場所まで来た所で、
 一筋の川に沿って右手の山間の道へ切り込みます。
 二キロほど車を走らせると、
 私が現在通勤で使っている高速道路の下を潜ります。
 高速道路は高く長い高架橋の上を走っています。
 いつもならばこの橋の上を通っているのに、
 今日はその下を潜ること、
 いい知れない感慨が湧いてきます。
 よほどのことがなければこうした反転の視覚、
 その場所に立つことが出来ないのですが、
 思いも掛けない機会を得て沸き上がってきたようです。
  
 目指した温泉施設は、
 そこから更に山間に深く入った先にあります。
 一足遅れて出発していたので、
 私一人があまりに遅くなってはいけないと心は急ぎます。
 日も暮れかけ、
 片側が開けた海岸線の道から、
 両側が山や木々に覆われた道に分け入ったせいもあり、
 急激に辺りの光が失われ、
 雪を抱く辺りの景色が深い青色に包まれていきます。
 
 この暮れかけの雪景色が何とも言えず美しく、
 私がこの場所に思い描いた光景が処々に広がっています。
 こうした風景を見ながら、
 温泉宿への一本道は辿る川を何度か左右に渡りながら、
 海から十一キロほど走ってようやく宿に到着しました。
 山深く日も暮れ気温が下がり、
 日中降りしきっていたぼた雪の水分も減り、
 しっかりとした雪になっていました。

 東京からの客人と出向先の上司は日暮れ前に到着し、
 まずは降りしきる雪を見ながら一献傾け、
 雪見酒と洒落込み楽しんだようです。
 残念ながら私はその雪見酒には間に合わず、、
 宿に到着したときは既に温泉に浸かっていました。

 それでも宴席の前に温泉に浸かることを許され、
 宿に向かう途中目にした光景や、
 その映像を思い浮かべながら
 一人温泉に浸かりました。
 写真を撮ることが出来なかったのは残念ですが、
 仕事の一区切りにこうして宴席前に温泉に浸かる、
 最近得ることの無かった安らぎを得る事ができました。


 宴席、
 旨い日本酒と地味でありながら地元の素材を使った料理に舌鼓を打ち、
 客人にも喜ばれ無事に宴席を終えました。
 一軒宿で宿の中に飲み処などが無いので、
 この時期限定で発売される地酒の雪中貯蔵しぼりたて純米酒を二次会で楽しみ、
 無事に接待が済みました。

 布団に入る前に再び湯に浸かりました。
 先ほどは時間が無く入ることの出来なかった露天風呂に浸かりました。
 雪は降り止み雪雲も解れ星空も覗いていました。
 薄暗い露天風呂に浸かりながら冬の星座を眺めました。
 明日の天気予報は晴れ、
 朝に晴れ渡れば青空の下に広がる光輝く雪景色を見ることが出来そうな予感、
 そうした光景を眺める楽しみを密かに抱きつつ、
 無事に仕事の山を越え、
 また、恙無く宴席の接待が済んだこともあり、
 体と心が緩み、暖まり、
 心地よく寝床に付く事が出来ました。
 
 

 一夜明け、
 まだ薄暗い打ちに三度温泉に浸かりました。
 温泉に浸かり明け行く景色を眺めたいと思ったので、
 早く布団を抜け出したいのとしばらく布団中で温もりを楽しみ、
 頃合いをみて浴場に向かいました。

 ゆっくりと温泉に浸かります。
 空もゆっくりとその明るさを増します。
 普段自宅の風呂ではどちらかと言うと烏の行水が多い私としては、
 この朝はゆったりと一時間ほど時間を掛けて温泉に浸かりました。

 朝食は田舎の風情を帯びた献立、
 素朴な味わいが引き立つ美味しいご飯、
 全員お代わりをして十分に腹を膨らませまました。

 朝食後部屋へ戻る途中、
 廊下の窓から朝陽に輝く雪景色を見て、
 皆その美しさに目を奪われていましたが、
 私は手にしたコンデジを屈指して何とか思い通りに写真を撮りたいと、
 一人廊下に残り写真を撮りました。
 お陰で部屋に戻ったときは皆既に出発の支度を整えていました。
 私と言えば朝食前にゆっくりと湯に浸かっていたため、
 全く出発の支度が出来ていません。
 その現実に気づき慌ただしく出発の支度を整えます。
 けれども同行者が皆部屋を出た時は、
 私はまだ荷物をまとめている始末です。
 そんな慌ただしい中にあっても、
 どうにも窓の外の景色に未練がありました。
 それまで自分が思うように写真を撮ることが出来なかった、
 そんな思いが心の底にあったからでしょう。
 部屋を出る間際、
 投げやりではありますが極僅かな時間を割いて写真を撮りました。

 

 帰り道、
 昨日登った道は今朝は下り坂、
 朝の冷え込みで路面が凍っています。
 必然車の速度や遅く運転は慎重になります。
 けれども道すがら目にする風景が、
 あまりにも美しく、
 雪が朝陽に光輝いています。
 写真を撮りたいとの欲求が心の中に沸々と沸き上がって来ますが、
 客人を乗せた車と同行している為撮影することなど出来ません。
 雪の状態、光の加減、天候、何を取っても理想的な光景が目と鼻の先に広がっているのに、
 その光景を写真に撮る事が出来ない苛立たしさ、
 いっそこれほど素晴らしい光景が広がることにない悪天候にでもなってしまえば諦めが付くのですね、
 その時の状況ではどうにも写真を撮ることが出来ません。
 こうした光景はいくつかの条件が奇跡的に良い方向に重ならないと出会うことが出来ません。
 
 そんな心の葛藤を持ちながら帰路を走ります。
 やがていつも通る高速道路の高架橋を潜り海沿いの国道に出ます。
 目の前に広がる日本海は、
 今日も荒ぶれる事なく穏やかに佇んでいます。
 交差点を左に折れ仕事場に向かいます。
 つい今ほど目にした光景を、
 何とか記憶に留めたいと考えます。
 写真を撮ることは出来ませんでした。
 後は拙い文章に頼るしかありません。
 稚拙でも良いから自分の記憶に残るよう書いてみよう、
 そんな事を考えながら仕事に就きました。 



 






  

桑取20.jpg
〔01〕



 昨日の降りしきる雪景色から一変、
 部屋の外には光り輝く雪景色が広がりました。
 こうした景色が部屋の前に広がっていたと、
 説明するために撮りました。






桑取21.jpg
〔02〕



 
 一人取り残された部屋で、
 慌ただしく支度をしながら撮った写真。
 この二枚の写真がその時撮った写真です。
 
 正確には、
 前記事の最後の写真もその時撮った写真です。
 




    *




 〔言い訳〕

 この写真を撮ったのが一月二十七日ですから、
 二週間掛けてこの記事を書いている事になります。
 言い訳をするためにここまで長い文章を書いてしまった形になりましたが、
 実はこの接待の前後に目にした光景、
 そして、その光景から得た心象、
 それらの映像から頭の中に浮かぶ言葉と断片的な文章、
 何とかまとめ上げたいという思いに、
 少しずつ書いては消し、
 また書き足してこうしたブログの記事に仕上げました。
 言い訳の説明をするより、
 その思いを記録する方に心惹かれてしまいました。

 
 今回のこの接待、
 その席となった宿泊先において、
 目にした光景や感じ思ったこと、
 また、その往復の途中に目にした風景や光景が、
 写真として納めたいと心の底から感じていたのに、
 接待をする身であるため、
 出向中の身であるため、
 また、様々な状況からカメラを向ける時間が無かったこと、
 それが前記事の写真に対しての言い訳なのです。

  


    *



 〔顛末 その一〕

 年頭に引いた風邪、
 ようやく癒えてきたとこの日までは喜んでいましたが、
 温泉を満喫するために入った朝風呂で、
 少々長いこと露店風呂に入った為、
 弱い喉がやられました。
 温泉に入って風邪がぶり返しました。
 この日から再び風邪薬を服用する事となりました。
 あれから二週間、
 まだ風邪は完治していません。
 仕事、日常生活に支障のない風邪ですが、
 あの時の配慮が足らなかったと頻りに反省しています。
 



 〔顛末 その二〕

 昔から傘を良く持ち歩く性格故、
 前が降りそうな気配があるときには、
 面倒がらず傘を持って出掛ける方です。
 したがって、
 自分は傘を持ち歩く人間だという思いがあるため、
 飲みに行くときに持って行った傘を、
 しっかりと忘れずに持ち帰っていたのですが、
 最近は歳のせいか、
 傘に限らず忘れ物をすることが多くなりました。
 この時も宿に着いて時には雪が降っていたため、
 駐車場から宿の玄関まで傘を差して行きました。
 けれども翌日、
 頭上には青空が広がり、
 白い雪が目映いほど輝いていたため、
 すっかり傘の事は忘れてしまい、
 宿の玄関に傘を置いてきてしまいました。
 
 傘を取りに行くには通勤途上にあると言いながらも、
 往復二十キロ以上遠回りしなければならない。
 朝早く出勤し帰宅は遅い。
 ただ傘を取りに行くには不利な状況。
 結果この温泉施設が立ち寄り湯をやっているため、
 日曜日に家族で日帰り入浴に行くという案。
 この日曜日に早速実行しました。
 五百円ほどの傘を取り戻すために、
 入浴料大人一人五百円。
 傘を取り戻すために千五百円を要しました。
 金額だけを問うのであればこうして傘を取りに行くなど意味のない事。
 けれども傘に対する思い入れが深いので、
 こうした行動を取ってしまうのです。
 前に使っていた傘は七年、
 特別高価な傘ではなく、
 特別愛着のある傘と言うわけではありませんが、
 壊すわけでは無く、
 無くすわけでもなく、
 しっかりと七年間使ってきた傘でした。
 したがって今使っている傘も、
 使える間に我が手から離れる事に納得出来なかったのです。




 最近、どうにも筆が進みません。
 記事を書こうとしても断片的な言葉しか頭の中に浮かんできません。
 その僅かな言葉を紡ごうとしますが、
 なかなか上手く繋がりません。
 時間が私の感覚より少し早く流れているような気がします。
 私の思考が時間に追いついて行かない、
 そんな気がします。

 結果としてこの長文を上手くまとめ上げる気力がありません。
 自分でも嫌になるほど文章を読み返しているので、
 もうこれ以上読むのが苦痛になってきました。
 最後は校正もままならず更新します。
 多少文章の不出来はお許し下さい。
 やはり気力と根気が維持しませんでした。
 最後に、
 本記事を最後までお読みいただいた方、
 本当にありがとうございます。
 心よりお礼申し上げます。




 〔追記〕

 結果、
 言い訳が不十分で何を言いたかったのか分からない文章となってしまいました。
 その辺は何とか皆様のお力でお察しいただくよう、
 重ねてお願いいたします。











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コメント 11

お茶屋

まずはお身体、本当にご無理のありませんようにと☆
お大事にでございます!
by お茶屋 (2009-02-10 21:48) 

marcy

私が言うのも何ですが、写真はそんなものだと思います。
最高のシチュエーションに出会える機会など、まず滅多にないものです。
だからこそ、「今度こそ」という気概が続くのだと思うのです。
自分のやりたいこと、撮りたいもの、心底狙うには、
写真を生業にする以外にないかもしれませんね。

私もカメラを持っていない時に限って「ああ、これを撮れたら...」
と思うことはしょっちゅうあります。
でもリベンジを狙って次そこへ行っても前回の感動に勝る場面に
会ったことはありません。

一期一会、この一瞬のチャンスを逃さないようにお互いに準備して
おきたいものだと願う記事でした。
by marcy (2009-02-10 22:04) 

文子

お体、大切になさってください。
そうですね。この頃、みんな、忙しくって、
時間だけが虚しいままに、過ぎていく感じもします。
しかし、何かを掴んでいきたいです。
by 文子 (2009-02-11 02:05) 

音鈴さん

しっかり読まさせて頂きました!
色んなジレンマの中撮った写真なんですね。
でもきっとその時以上に撮りたいって思える瞬間は
これから先もたくさんあると思います!!
その時に備えて、健康第一で頑張りましょう!!
by 音鈴さん (2009-02-11 03:48) 

yoriko

すらすらと読ませて頂きました。
文章からその光景が目の前に広がるようでした。
お写真美しいですね。
お体大事にして下さい。私も健康第一だと思っております。
by yoriko (2009-02-11 10:04) 

タン・ロン

ドキュメンタリーですな
by タン・ロン (2009-02-11 12:39) 

unicon

雪が無いとはいえ、さすが雪国!いいなぁ、つららのある光景。
(と勝手なことを言っている関東人です・・・。)
by unicon (2009-02-11 17:48) 

mine

そんなシチュエーションで撮るだけでも凄い。

by mine (2009-02-11 20:19) 

aya

この写真ですね、これはじっくりと撮りたい風景ですよね、
とっても心残りだったと思います。
また良く説明をしようという寂光さんのお人柄が 現れているようで
引き込まれて読ませていただきました、充分伝わりましたよ、
お風邪が早く治りますように!!
by aya (2009-02-14 14:55) 

寂光

ご訪問頂いた方、ありがとうございます。
感読して頂いた方には心よりお礼申し上げます。
by 寂光 (2009-02-23 22:12) 

SAKANAKANE

カメラを持ってない時に限って、写真を撮れる状況じゃない時に限って、って結構有りますよね。
形に残せないのは残念ですが、そんな時は心に深く焼き付けるしかないですよね。
自然と景色が思い浮かぶような文章で、長さを感じるコトも無く、楽しく一気に読ませて頂きました。
読む時間は僅かですが、書く方は大変だったんでしょうね。風邪もひかれていたのに、お疲れさまでした。
by SAKANAKANE (2009-03-01 15:06) 

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