意匠 [社景]
「品川神社」 その三
品川神社への早朝散歩三回目。
品川神社の一番奥にある阿智稲荷下社。
神社の敷地形状や起伏に上手く合わせて建てられた小さな社。
品川神社内の社でもこちらは特に好きな場所。
決して華美で圧倒するような意匠では内のですが、
薄暗く小さくなその空間に設えられた意匠がに心惹かれます。
〔01〕
阿那稲荷上社から、
朱色では無く濃い赤色に塗られた鳥居をいくつも潜り、
下社へ向かいます。
その脇にある石垣に根を下ろす草。
二年前にも此所の草の写真を撮っていて、
その写真の印象が今でも鮮明に残っている。
こうして同じ場所で同じ被写体を追うことは、
何度も足を運び写真を撮る楽しみであります。
〔02〕
稲荷社の水鉢。
水面に映る光と影は、
背景の壁に映る木漏れ日と木の葉の影。
〔03〕
稲荷社内の床の敷石にも木漏れ日が差し込んでいました。
此所は小さな空かで、
とにかく薄暗く静寂な空間です。
〔04〕
艶のある榊の葉が薄暗い空間の中で目を惹きつけます。
その力強い緑色に心惹かれます。
〔05〕
稲荷社の中に小さな祠があり、
その前に小さな鳥居があります。
一尺四方ほどの小さな畳は、
祈りの際に跪くために置かれたのでしょうか。
鳥居と祠の石の質感は、
繊細な光による浮かび上がる光景。
〔06〕
祠の中にはたくさんの狐がいました。
背景の黒色の中に浮かび上がる
狐の白、
榊の緑、
提灯と鳥居の赤。
日本情緒の色。
〔07〕
水鉢から流れ落ちる水。
その岩肌には日中もほとんど陽が当たること無く、
湿り気を含み苔むしています。
こうした薄暗い空間の中に、
小さな葉の緑色が浮かび上がる様は写真を撮らずにいられません。
〔08〕
「一粒万倍」
お金か印鑑を洗うと僅かな金銭が増えるという御利益。
この記事を書き始めるまで知らなかったので、
当然これまで此所で御利益を授かるべく祈願をしたことがありませんでした。
次回訪れた時にはどうしましょうか。
〔09〕
稲荷大神の祠屋根。
暗い空間に黒い屋根。
木々の隙間から差し込む僅かな光に、
その形が浮かび上がります。
〔10〕
光が満たされていない事による感応の光景
〔11〕
この日も蚊がいまして、
有り難いことに、
お気遣いの蚊取り線香が置かれていましたが、
残念ながら手首など何箇所も刺されました。
〔12〕
稲荷下社からの帰り道。
朝陽が横から差して、
石垣に様々な影を映しています。
〔13〕
深い影の中に、
強烈な赤い色と、
存在感の希薄な草の緑色が映えます。
〔14〕
拝殿に戻りました。
拝殿正面左脇に極小さな田がありました。
そこに植えられた稲が実っていました。
稲と紙垂は新鮮な取り合わせに感じられました。
〔15〕
これもまたいつも通り、
最後に手水鉢を写真に撮ります。
〔16〕
石造の手水鉢縁を水が濡れ、
朝陽を受けて輝く様は、
ただそれだけで画になります。
〔17〕
こうした光景が好きなので、
たくさんの写真を撮ります。
その僅かな表情の違いは、
ファインダーで見る映像では違いを見分けることが出来ません。
納得する写真を撮りたい一心で、
とにかくたくさんの写真を撮っていまい桝。
〔18〕
被写体との距離、
見る角度を少し変えると、
僅かに空の青い色が映り込み、
若干印象の違った写真になります。
〔19〕
品川神社を一巡りしました。
思いのほか時間が過ぎていまして、
早々に帰らなければならないことに気が付きます。
堪能はしたけれど、
もう少し動きの速い朝陽に映し出される光景を探して見たいと思いながらも、
帰路に着くこととします。
帰り際に、
振り返り拝殿を眺め、
再訪を誓うのでありました。
〔20〕
参道の階段を降りて足取りを速めます。
きっと私の背後には、
引き続き様々な光景が広がっていることでしょう。
平成二十七年 九月二十二日(火) 撮影