蛍光 [水景]
この日どのような状況だったのかはよく覚えていませんが、
食料品から雑貨まで取り扱っている近所のドラッグストアへ
飲み足らない酒を買いに行ったことだけはよく覚えています。
〔01〕
途中、アスファルト道路のすぐ脇にある田んぼ、
まだ田植えの準備もされていませんでしたが、
少し深く広い水溜りがあって、
そこには思うままに生えた切った雑草があり、
その雑草に意味もなくカメラを向けました。
〔02〕
既に良い酔い心地でした。
酔人の不可解な行動、
歩いて酒を買いに行くのに何故カメラを持っているのか、
今でも不思議でなりません。
〔03〕
酔ってはいるけれど、
写真を撮る気力は失っておらず、
決してきれいとは言えない目の前の広が田んぼに向かい何枚も写真を撮りました。
素面を装ってはいますが、
酔人の行動はやはりどこか可笑しいのでしょう、
必死にカメラを向けている私の背中を、
怪訝に見る数人の視線を感じていました。
〔04〕
何故こんな所を写真に撮るのか、
最初は自分でもはっきりとは分かりませんでした。
イメージする物がありました。
最初の内は何をイメージしているのか自分でも分からなかったのですが、
とにかく撮りました。
〔05〕
夕陽が水面に輝き、
田んぼから空までとにかくまぶしいほど明るい光景が眼前に広がっていましたが、
その時、
私が頭の中に描くイメージは夜でした。
〔06〕
酔いながらも試行錯誤して撮りました。
撮っている内に少しずつ自分がイメージする世界が見えてきました。
〔07〕
私がイメージしたのは蛍の光でした。
〔08〕
暗闇に儚く輝く、
蛍の光でした。
四月二十四日（日） 撮影
