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鉄旅 [旅景]



鉄旅


青春18きっぷの旅 四日目 (その一)


青春18きっぷでの旅も四日目、
次に出かけたのは飯山線を巡る旅でした。
飯山線は割合近くに存在していながらこれまで乗る機会がありませんでした。
観光目的ではやはり車の方が便がよいので、
出掛ける時にはどうしても車で掛けることになってしまいます。
けれども、
長野県を流れる千曲川が新潟県に入ると信濃川と名を変える、
まさにその辺りを走る飯山線の列車が走り、
季節が移る度折々にその姿を車の中から目にすると、
一度この景色を飯山線の列車の中から眺めてみたいと思っていました。
途中下車や駅の入場など自由の効くこの切符を握り、
四日目の旅に出掛けました。




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〔01〕


この日の旅は最寄駅から始発列車に乗ります。
随分古い車両ですが、
嘗ては特急として活躍した車両、
リクライニング出来るシートなので、
長距離乗るときには楽に移動することが出来ます。












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〔02〕


旅に出掛けたのは去年の四月八日、
この切符の有効期限はあと三日、
平日に休暇を取っての旅となりました。












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〔03〕


信越本線を長野に向かいます。
四月に入って桜が間もなく咲く頃でしたが、
山に近付くにつれ地を覆う雪が深くなります。












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〔04〕


新潟と長野の県境に近付けば、
雲の切れ間から朝陽を浴びた妙高山車窓近くにその姿を現します。












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〔05〕


新潟県最後の駅妙高高原駅を過ぎれば長野との県境がすぐに迫ります。
県境で見る妙高山、
列車の中からその姿を見ることのできる最後の地点、
いつもここで妙高山に別れを告げますが、
妙高山もまた私を見送ってくれます。












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〔06〕


長野県に入って一つ目の黒姫駅、
昨夜降った雪は粉砂糖を振るったような雪がうっすらと積もっていました。



    *



列車は県境の山裾を縫うように走り、
長野盆地へと出れば豊野駅の手前で左手後ろから飯山線が寄り添って来ます。
豊野駅で下車して飯山線に乗り換えしてもよいのですが、
この日は一旦長野まで行き飯山線の始発列車に乗ります。












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〔07〕


七時前、長野駅に到着。
飯山線の戸狩野沢温泉駅行の列車に乗り換えます。
その列車は意外にも既に大方の座席が埋まっていました。

飯山線の列車のシートはクロスシートとロングシートの組み合わせとなっています。
進行方向左側のクロスシートは四座席で一つのボックスとなっていますが、
右側のクロスシートは二つの座席が向き合う形のものでした。
この対面がシートは腰掛ける二人がお見合いする形になり、
第三者が立ち入ることを拒むような何とも微妙な空間で、
先に腰掛けている人の容姿、風貌によってはその前に座りにくいという状況を生み出します。

千曲川、信濃川の車窓、
川を眺めるのが目的であればそのお見合い席に座らなければなりません。
残念ながら初めて乗る飯山線の列車ではこの席を確保することが出来す、
仕方なく左側のロングシートに腰掛け、
対面する右側のシートに座る乗客の間駆け抜ける景色に眺め私情を深めます。












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〔08〕


長野駅を定刻に出発した列車は、
長野盆地の隅の平坦部を新潟県境の山巣に向かい豊野まで走ります。
豊野駅を過ぎればすぐに線路は右へとカーブし、
やがて右側に千曲川が顔を見せ寄り添います。
飯山線と並行する道路は全線何度も通ったことがありますので、
周囲の景色はよく知っているわけですが、
いつもとは違った視点で見る景色を眺めるのがこの鉄道旅の楽しみであります。

線路と川が山間に分け入ると、
窓の外を間近に見たいと反対側に開いた僅かな席へと移りました。
ちょうど朝の陽射しが雲間から漏れる車窓を記念にと僅か数枚の写真を撮りました。



    *


実はこうした鉄道の旅の裏側にある目的は、
車窓を眺めながら酒を飲むことが出来ることにあります。
けれども普通列車に限定されるこの切符の旅では、
観光目的の乗客よりも通勤、通学などの日常生活での足としての乗客が多く、
そうした列車の中では酒を飲むことが憚れる行為と感じられ、
増して一人旅では我慢することが度々あります。
ですから他の乗客から一人酒を飲む分離された空間を確保できないロングシートでは、
酒に限らず飲食すら気が引けて出来ないので、
こうした旅ではできるだけクロスシートを確保したいものです。

それにも関わらず、
通勤通学客で全ての座席が埋まり立っている乗客も多い中、
朝早い列車の中で缶酎ハイを飲んでいる中年の男がいました。
しかも握りしめたのはロング缶です。
こうした空間の中で周囲を一切気にすることなく、
二人だけが向き合うクロスシート片足組んで、
悠然と酒を飲むその強者に最初は驚きましたが、
次第にその堂々とした飲みっぷりに少しだけ羨望の感を抱くのでた。
言うまでもなくこの強者の目の前の席は空いたまま、
座る勇気を持った乗客はいませんでした。












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〔09〕


この日最初に下車したのは飯山駅の一つ先となる北飯山駅です。
飯山の寺巡りをして写真を撮るのが目的でした。
列車はここで飯山高校の生徒と数人の教師が降りてしまうと、
二両編成の始発列車は空になってしまうほどでした。
列車を降り小さな列車と高校生を見送れば、
小さく簡素な駅舎とホームだけがそこに残り、
朝の静かな空間に一人踏切に立ちこの日の旅の主役に線路を眺めました。

さっそく勝手知った飯山の寺巡りに向かいます。
平日の朝に一人で写真を撮る優越を心の隅で感じながら、
すぐに普段の写真世界に入ります。












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〔10〕


香炉の中に落ち葉の姿を見つけました。
越した冬の間にその色を失った者もありました。












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〔11〕


供え物のリンゴの色は鮮やかですが、
その色も鳥の口ばしに突かれた所から失っていきます。












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〔12〕


請う願い事はありませんが、
私もそっと手を合わせます。












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〔13〕


静かな空間には静かな色が似合います。












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〔14〕


千曲川に沿う飯山の町、
春を感じる空を見つけました。
しばし歩みを止めその光溢れる空を眺めます。












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〔15〕


その光が遠くの山並みや町へと降り注ぎます。












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〔16〕


寺院の山門を通り抜ける参道の敷石、
それぞれに表情があります。












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〔17〕


山門に掛る寺名の額、
金色の字面に目を惹かれます。












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〔18〕


手水の水面、
落ちる水滴に揺れていました。












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〔19〕


水を得て生きる命がそこにあります。












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〔20〕


この空間に予期しない色を見つけては、
それを写真に収めます。












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〔21〕


好きなものを見つけると心が暖まります。
それを写真に撮るだけで喜びを感じます。












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〔22〕


文字の力を感じる光景。














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〔23〕


香炉の鮮やかな色合いに、
心が清浄になるような気がします。












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〔24〕


敷石の窪みに溜り水、
そこに光を見つけました。












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〔25〕


小さな生き物たちが息づいています。












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〔26〕


何気ない光景ですが、
何かしら春を感じました。












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〔27〕


何度か来ているここ飯山の寺巡り、
平日の朝に歩いたことで多くの写真を撮り心満たされました。
この日幸先の良い旅となり、
この後の旅に期待が膨らむのでした。












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〔28〕


北飯山駅から寺巡りをしながら、
一駅戻るようにして飯山駅まで歩きました。
旅の空が青いと、
ただそれだけで写真を撮りたくなります。












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〔29〕


ローカル線の駅は長閑です。
朝の明るい陽を受けながら、
緩やかに時間が過ぎていきます。












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〔30〕


飯山駅、
次に乗る列車が来るまで停車していた車両の写真を撮りました。












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〔31〕


この車両の面取りされた意匠が好きです。
この面取り部分に塗られた緑色が、
山間を縫うようにして走る車両の姿が嫌味なく映えるように思います。

この後、長野からやってきた列車で再び戸狩野沢温泉駅に向かいます。



    *



青春18きっぷの旅 四日目 (その二)へつづく。






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