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妻有 [心景]





 越後妻有 大地の芸術祭 2015 三日目 (その二)




夏の最中に開催される大地の芸術祭、
これまでの記事で何度も書きましたが、
今年、私が出掛ける日は天候に恵まれず、
この日も朝から小雨が降っていました。
途中松之山では霧に包まれ、
夏とは思えない景色の中を山越えをして津南へとやってきました。
天候が悪くても、
昼食には出掛けた先の美味いものを食したいという願いを叶えるため、
出掛ける前には食事処の目星を付けて出掛けるのですが、
この日は津南名物の妻有ポークのかつ丼などを食べる目論見でしたが、
目当ての店は12時前というのに既に店は満席の上並んでいる人もいて、
時間の限られた作品巡り故、
この日はかつ丼を諦め近くの蕎麦屋で蕎麦を食しました。
残念ながら店構えに合った蕎麦を食べる事が出来ず、
空模様と合わせ意気消沈。
食後は気を取り直して途中で見かけた造り酒屋に立ち寄り、
期待の出来そうな日本酒を買い込み午後の作品巡りへと出発しました。




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〔01〕


造り酒屋から十数メートル。
あっという間に目的の作品会場に到着しました。
しかし、到着したと同時に雨が本降りとなりました。

こちらの作品は、
嘗て旅館だった建物を使って展示されていて、
玄関は営業されていたそのままなので、
受付もフロント風情。
案内されるままに右手の廊下を進むと、
ピンポン球のような球が空間を滑るように転がっているという、
不思議な空間が広がっていました。
目立たないテグスを二本、緩やかに傾斜を付けて張り、
その上をピンポン球が転がっていくという仕掛けが縦横無尽に転がるように張り巡らされ、
緩やかにいくつものピンポン球が転がっている光景は見ていて飽きることがありません。

その発想や仕掛けに感服し呆然と眺めるのですが、
その光景を上手く写真に撮ろうという思いが、
昼食と天候による気落ちからカメラを操作する意欲が湧かず、
シャッターを押せどまともな写真を撮る事が出来ず、
皆様にこの作品を伝えることが出来ない事が残念でなりません。












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〔02〕


廊下に洗濯ばさみで留められているこれらの物体は一体何なのか。
ピンポン球の転がる脇にある扉を開けて部屋に踏み入るとその答えが分かります。












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〔03〕


その部屋にはこのような影絵が繰り広げられていました。












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〔04〕


様々な絵柄が白い布に映し出されています。












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〔05〕


影絵の仕掛けはこのようになっています。












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〔06〕


光源の周りに絵柄のプレートが吊らされ、












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〔07〕


勢いよく回転しています。












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〔08〕


私がこの影絵の空間で感じた事は、
影絵の仕掛けやその絵柄のおもしろさ以上に、
この部屋が旅館の大広間であり、
嘗ては地元の人の結婚式披露宴などが繰り広げられた場所であることが、
影絵の仕掛け以外にはそのそつない装飾に一切手が加えられて居らず、
現代アートとの一切関係性のないその点です。
カーペットに染みがあったりして、
この場所での時間と冠婚葬祭の宴、
そして衰退したこの旅館の現状。
現代アートの作品を楽しみつつも、
何か心を動かされる姿がそこにありました。












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〔09〕


記念に自分の姿をその影絵の布に映しました。












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〔10〕


会場の案内に従い嘗て旅館だった二階へと導かれました。












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〔11〕


二階は宿泊する客室がいくつかあり、
それらの部屋はまだ古びてはおらず、
最近まで営業されていたことが窺えます。












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〔12〕


その客室にそれぞれ現代アートの様々な仕掛けがありました。













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〔13〕


そのひとつの部屋で記念写真をとりました。












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〔14〕


二階の作品鑑賞を終え、
再び一階へと降りる階段にて。
壁に貼ってある写真は、
地元の子供が変装した顔写真のようです。












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〔15〕


玄関フロントを通り過ぎ、
左奥へと導かれ、
この会場の目当ての作品を鑑賞します。

そこには「Light Book 北越雪譜」という作品が展示されています。


北越雪譜』(ほくえつせっぷ)は、江戸後期における越後魚沼雪国の生活を活写した書籍。初編3巻、二編4巻の計2編7巻。の結晶のスケッチ(雪華図説からの引用)から雪国の風俗・暮らし・方言・産業・奇譚まで雪国の諸相が、豊富な挿絵も交えて多角的かつ詳細に記されており、雪国百科事典ともいうべき資料的価値を持つ。著者は、現在の南魚沼市塩沢で縮仲買商・質屋を営んだ鈴木牧之1837年天保8年)に江戸で出版されると当時のベストセラーとなった。
〔※Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E8%B6%8A%E9%9B%AA%E8%AD%9C)より転載〕



真っ暗なそれほど大きくはない二間続きの和室に、
小さな机の上にやや大きな「北越雪譜」が置いてあります。
天井から一灯の明かりによりそのページが照らされています。












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〔16〕


そのページを開き、
絵柄のページが出てくると、
不思議なことにその絵のページから光による雪の結晶が浮かび上がってきました。










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〔17〕


浮かび上がった雪の結晶は、
本の前方上に向かって移動して行きます。












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〔18〕


別の絵柄のページを開くと、
今度はそこに描かれた人物などが浮かび上がってきました。












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〔19〕


こちらも同じように、
本の前方、上に向かってその絵が登っていきます。












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〔20〕


ページを素早く捲ると、
雪の結晶と登場人物が一緒に浮かび上がり登っていきます。












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〔21〕


本のページと何かの装置が連動していて、
絵柄のページを開くとこうした光の絵柄が浮かび上がるようです。












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〔22〕


その仕掛けが面白く、
何度も何度もその本のページを捲っては、
たくさん写真を撮りました。












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〔23〕


この真っ暗な空間に光の絵柄が登っていく仕掛けは見事です。












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〔24〕


左側からその光の絵柄が登っていく姿を見ます。
本を開く者から見る事が出来る光の絵柄の下に、
もう一つ光の絵柄が映っている事が分かります。












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〔25〕


その仕掛けは、
本の前方にはその存在を希薄にする為の薄い布が張られていて、
その布に光の絵柄が映し出され、
薄い布を透過した絵柄が床の畳の上にも映っていたのです。












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〔26〕


右側から見るとこのようになっています。
薄い布は押入の襖に辿り着き、
畳を這った光の絵柄は最後はその襖に映ります。












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〔27〕



本から浮かび上がった光の絵柄が登り詰めるその先には、
そのページの題名でしょうか、
ここにも光の文字が映し出されます。












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〔28〕


この仕掛けの部屋の左手には障子窓があり、
時折この障子窓に雪が降る姿が映ります。












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〔29〕


黒い障子窓に映る白い雪は、
実際にはある姿ではないのでしょうが、
この真っ暗な空間に設えられた「北越雪譜」には、
とてもよく合う演出で感動しました。


嘗て旅館であった建物を使っての現代アート展示、
様々な仕掛けと出会う事が出来ました。
作品鑑賞を終え外に出ると土砂降りの雨。
この後この日一番遠くへ行かなければならないので、
心は沈み込みます。
予定時間より少し遅れていたので、
屋外展示の作品はいくつかを諦め、
清津峡へと向かって出発しました。












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〔30〕


清津峡にある嘗て小学校であった体育館。
大地の芸術祭の作品倉庫として改修工事を行い、
芸術祭期間中は、
そこにも作品を展示してありました。







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〔31〕


公式ガイドブックの写真では、
その改修工事により、
アート作品を展示する為のスペースに相応しく、
四面の壁はコンクリート打ち放しとなり、
その空間自体に興味を持ち、
この芸術祭に於いては自宅から一番遠い場所ですが、
足を運びました。



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〔32〕


実際に訪れたこの倉庫、
ガイドブックで見て想像していた空間とは違い、
思いのほか狭い空間でした。
考えてみれば山奥の小さな小学校の体育館ですから、
私が勝手に勘違いしていただけなのです。












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〔33〕


こちらの会場の駐車場は、
体育館の前にある嘗てグラウンドだった場所。
当然雨が降るとぬかるみとなり、
車を降りると足場の悪いところを歩かないといけません。
この会場だけではなく、
多くの会場は土の駐車場があり、
ひとたび雨が降ると車のタイヤは泥だらけ、
履き物は汚れ心は乱れ、
作品鑑賞の気持ちが落ち込みます。












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〔34〕


ここに到着した時も、
雨はしっかりと降っていて、
多くの人の履き物は泥だらけでした。
私は防水の効いたスニーカーを履き、
娘は長靴を用意してきたので、
幸足回りは酷いことにはなりませんでしたが、
多くの人は履き物がずぶ濡れとなっていました。












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〔35〕


車からカメラを持って降りる事が億劫になり、
しっかりとした写真を撮る事は諦めました。
ここからはコンパクトカメラ一台を携えての作品鑑賞となりました。












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〔36〕


体育館を作品保管と展示の為に
















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〔37〕


体育館を作品保管と展示の為に改修された空間に、
思っていたいたよりもしっかりとした作品が展示されていました。












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〔38〕


薄暗い空間に作品が静かに座していました。












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〔39〕


黒い炭。
外が暗ければ、
作品も暗い。












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〔40〕


心がざわめきます。












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〔41〕


時間に制約があり、
時計を気にしての作品鑑賞でした。
天候の具合が悪く、
心は沈み落ち着いて作品鑑賞ができません。
八月のまだそれほど遅い時間ではないので、
外は薄暗く、
時間を気にして雨中の路を運転し、
いくつかの山越えをしての帰路を考えると、
一層心は沈むのでした。












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〔42〕


この日予定していた作品は一応すべて鑑賞し、
帰路にいくつか立ち寄り鑑賞できれば良いかと思っていましたが、
天気が悪く、
大地の芸術祭でも有名な作品の直ぐ脇を通っても、
車を停めることなく脇目に見るだけで帰路を急ぎました。












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〔43〕


そんな中で、一つだけ意を決して立ち寄った作品は、
一筋の川の脇にある鉄を使っての作品でした。
作品を展示したスペースは白い砂利が敷き詰められ、
空間を仕切るように鉄の壁が設えられていて、
その赤錆色の壁で仕切られた空間には、
いくつかの室礼があり、
その感覚がよく伝わって来るのですが、
制作されてから数年経ていて多少作品に衰えが見られ、
更に生憎の雨と風で枝葉が散乱している様に、
作品本来の美しさや意図が薄まって目に映ります。


ここには、
川に向かって大きなタイヤがチェーンで吊り下げられたブランコがありました。
この日は天候に恵まれず、
快適な作品鑑賞とはなりませんでしたが、
娘は疲れも見せず、
そのブランコを楽しそうに乗りはしゃいでいました。
親の沈んだ心には、
その笑顔がせめてもの救いであり、
宥めてくれるのでした。




八月三十日(日) 撮影



さて、年内仕事に追われ、
ブログの記事を仕立てる時間がありませんし、
写真を撮る暇など全くありません。
きっと年内に芸術祭の記事を完結させる事は出来ないでしょう。
ということで、
本記事も写真を選択し、
ここまで文章を書く添えるのがやっとです。
推敲なしの書き下ろし、
文章の意味不明、
誤字脱字はどうかご容赦下さい。






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スミッチ

障子窓に雪が降る姿、いいですね。
「Light Book 北越雪譜」の見せ方いいですね。
by スミッチ (2015-12-07 20:57) 

kohtyan

北越雪譜の本から、絵が飛び出してくるなんて、摩訶不思議です。
見応えのある芸術祭ですね。
by kohtyan (2015-12-10 18:41) 

JUNKO

今日はゆっくり拝見する時間がありません。改めて見せていただきます。来年も宜しくお願いします。
by JUNKO (2015-12-31 17:32) 

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