妻有 [心景]
2012 越後妻有「大地の芸術祭」の記憶 その六
大地の芸術祭の中心地は十日町市となるのですが、
十日町から鉄道なら気動車でのんびりとJR飯山線を、
道路ならば国道117号線にて長野県との県境を目指して、
共に信濃川に沿ってしばらく走れば、
川の名が信濃川から千曲川へと変わる県境の町、
津南町に辿りつきます。
その鉄路と国道の中ほどに、
静かな町の中に嘗て織物工場だった建物があります。
活気のあった時代があったのかどうかは知り得ませんが、
この小さな町の中に、
建物一棟を使ってのアートが、
夏の眩しい光の中、
私の心を惹きつける不思議な世界が広がっていました。
〔01〕
硝子製の風鈴が吊り下げられた部屋。
一つの窓から夏の光が溢れていました。
この明るさからは、
次に目にする空間を想像することができません。
〔02〕
歩みを進めるれば、
一転、光の遮られた空間が広がっています。
Tシャツがハンガーに吊るされ、
その中には電球が仕込まれています。
浮遊感を感じるこの空間が好きです。
Tシャツの無う奥には、
このあとに出てくる作品が写っています。
〔03〕
前の写真のTシャツは実は裏側で、
脇を通り過ぎ振り返ると、
このような世界が広がっています。
〔04〕
Tシャツの上部は赤色や緑色に染められています。
〔05〕
一枚一枚のTシャツに、
命を与えられたよう。
〔06〕
Tシャツの空間を正面に見てその背中、
建物の突き当たりの壁に現れたアート。
まるで壁画のようなであります。
本来壁と接しているはずの2階床が、
壁の手前で途絶え、
その隙間に2階の窓から差し込む自然光が、
壁面を照らしています。
空間と光の扱いが素晴らしい。
〔06〕
その壁には数えることが出来ないほどの、
ビニールで被覆されたハンガーが絡み合っています。
このハンガーという物体が、
空間と光の中で浮かび上がる姿に、
私は強く心を惹かれました。
その想いを、
上手く写真に撮ることが出来ず、
添える文章も技量なく、
上手く伝えることが出来ませんが、
この芸術祭の中でも特に好きな光景であります。
〔07〕
1階から2階へと足を運ぶと、
再び光溢れる世界が広がっています。
雲からぶら下がるハンガー、
何を意味するのか私には分かりませんが。
何やら微笑ましい光景です。
〔08〕
その雲を辿って先を行けば、
少し緑色の深い壁に辿りつきます。
〔09〕
その壁には、
ハンガーと蔦の葉が絡み合っています。
〔10〕
ハンガーに絡み付いて模様。
意図して配置されたのかどうかは分かりません。
〔11〕
更にその先に現れる空間。
此処はもう、
天国のように感じていまう場所であります。
〔12〕
雲が這うような様。
〔13〕
近く寄ってみれば、
このような素材で造られた空間であることを知りますが、
そのようなことはどうでも良いのです。
〔14〕
最深部。
また、あの暗い空間のモチーフが現れました。
雲を想わせるようなこの質感と浮遊感。
鎮座するシャツは心臓なのか。
もしかすると女王蟻か女王蜂のような存在なのか。
〔15〕
様々な想いが浮かんでくる場所です。
夏が近づいてきた今日この頃、
梅雨の不快な湿り気を含んだ空気が漂う空気の中で、
あの妻有の夏の風を想い出しています。
(平成二十四年) 八月十五日(土) 撮影
このアートは特に好きなアートで、
親しみのなかった現代アートを私に惹きつけるきっかけとなった場所です。
此処でこの作品の記憶を留めるために、
自分で撮影した写真ではなく、
大地の芸術祭では唯一絵葉書を買い求めた場所。
前々回に出会い、
前回も訪れた場所。
今年もこのアートと出会うことが出来ることを、
密かに胸に抱いています。
*
また仕事に追われてしまい、
すっかり余裕を失っています。
自宅でパソコンを開く時間がほとんど無く、
思うようにブログの記事を書くことが出来ません。
今年の芸術祭が始まるまであと一ヶ月と少し、
前回の芸術祭記事の下書きが記事があと二つなので、
何とか今年の芸術祭の前には全部更新することができるでしょうか。
春に撮った写真の整理もまだできていない状況なので、
普通の写真記事は恐らく半年遅れでの更新になってしまいそうです。
今年の芸術祭記事はいつ更新することができるのか心配になりますが、
本当の心配は今年の芸術祭に行くことができるかどうか。
50日の会期中に最低三回は行きたいので、
今から仕事の調整をしなければなりません。
07の世界が面白いす。実際に行って見たい思いを強くしています。
by JUNKO (2015-06-15 19:35)
妻有には、我が家の犬も連れて出かけました。様々な緑溢れる大地と、心地よい風の音、田畑を流れる硝子のように透明な水の記憶しか、今は残っていません。沢山の作品も、車や脚で巡ったのに、大きな空に建つ高圧線の鉄塔や、火の見櫓の群れしか思い出されません。
今思えば、越後の山々や、川や、家々が大きな作品でした。
寂光さんの写真の、光と影から教えられました。
by SILENT (2015-06-16 04:32)
とても興味深い空間の数々。
ハンガーの創造空間が一番そそられます^^
見せて下さって有り難うございます。
by MIKUKO. (2015-06-21 16:04)