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閑居 [旅景]

 

 大磯散歩 その六  「旧島崎藤村邸」




大磯15.JPG
〔01〕


西日を浴びて日焼けした畳。
その崩れた線に時を感じます。












大磯207.JPG
〔02〕


大正硝子の揺らめきに写り込む世界、
この硝子には、
家人の愛した庭の姿を外側に、
家人の姿を内側に映していたことを想い浮かべました。












大磯208.JPG
〔03〕


主が紡ぐ文章の、
紆余曲折の如く、
何やら木々の幹も曲折していました。




    *



九月二十一日(土) 撮影



恥を忍んで吐露すれば、
実は島崎藤村の小説や詩を読んだ記憶がありません。
勿論、教科書で出てくる文章には接したことがあり、
我が家の書棚を探れば、
藤村の書もある筈ですが、
その書名を思い出すことすら出来ません。
秋の日が傾き掛けた頃、
知識が何もない中で藤村終の棲家を訪問しました。


名のある作家故、
さぞ立派な書斎を構えていたであろうと想像していましたが、
思いのほか小さな居でした。
玄関脇を右に切れ込み小さな庭に入り込めば、
すぐに茶室風の書斎の縁に出ます。
書斎の角を左に曲がり、
その先の居間の広縁に進めば、
そこでもう庭の終わりです。


「萬事閑居簡素不自由なし」と、
藤村は夫人への書簡に書いているそうですが、
正に閑居、
執筆中のこの居に無音の空間を想い浮かべます。
原稿用紙の上を走る筆の意外に何があったのでしょうか。
思いつくのは庭を訪れる鳥の囀りしかありません。
私が訪れた時の音の記憶は残っていません。
現代の見慣れた周囲の家屋を目にしては、
主が居した時代の音を想像することは出来ませんでした。











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aya

そういえば、周りは音だらけ。
若者は歩いているときも イヤホン付けて、あふれる音の生活。
音が無いと落ち着かないって、だれか言ってた。
寂光さんのお写真には、そんな静寂がありますね('_')
by aya (2013-10-14 19:38) 

SILENT

静かに波打つ昔日の硝子。
この家の作家業の主が亡くなったのは、八月の或る日の夕刻。
「涼しい風だね」が最後の言葉だったと聞きました。
別荘地の下町の周りには、鉄道員や職人の家も御近所だった風情が今も色濃く残っています。当時は路地も人がすれ違うのに肩触れ合いそうな道幅で、猟師の竹垣の前を通ったときに、「こんな塀がのさばるから、、、」という声が、主にも聞こえ、竹塀をセットバックしたという話。近所のガキどもが塀の外で騒ぐので、主が思わず路地に飛び出て「静かにしろ」とし買った話。昭和も十年代の終わりの下町の光景で、今はひと気のない寂しさが逆に寂寥感になっているのかもしれません。当時は子沢山の家も多く、町の物売りの音も、鉄道の音も。
長々と書き連ねすみません。
by SILENT (2013-10-15 03:24) 

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